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平成24年度新人賞

市川 裕司 (いちかわ ゆうじ)

  • 受賞対象:日本画
  • 研修地:ドイツ・デュッセルドルフ
  • 出身地:埼玉県出身 埼玉県在住

受賞者プロフィール

プロフィールは受賞時の情報を掲載しております

多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻日本画領域を修了。同大学日本画研究室助手として2011年まで勤務。

アルミやアクリルといった現代身近な材質観を、作品の現在を表すツールとして構成し「日本画」の延長線を探ってゆく。古典技術や伝統様式を応用した平面や立体、インスタレーションを手がける。

2006年より銀座コバヤシ画廊にて透明アクリル板を支持体に描画を施した大型立体作品「genetic」シリーズを展開。屏風にルーツをもった重厚な形体に、描かれた有機的なドローイングが浮遊する姿は、既存の「日本画」イメージをはるかに超えた取り組みとして注目を集める。近年はグループ「META」に参加し、2010、2011年「METAⅡ」神奈川県民ホールギャラリー(神奈川)での発表や2011年「New Vision Saitama 4」埼玉県立近代美術館(埼玉)などにおいては、ポリカーボネートの透明フィルムを基底に、箔押しによって平面における身体と行為の境界線を探るシリーズ「eschaton」や生命の起源を描いた「螺旋体」など、空間絵画ともいえる巨大インスタレーションを行った。また、2012年より若手作家とともに、独自性をもった「日本画」の制作研究を行うグループ「イマジン」の活動を開始する。

本財団助成による海外研修

8月よりドイツ・デュッセルドルフを拠点に現代美術の先端表現と、その背景となるヨーロッパ古典美術を取材する。異文化におけるものづくりの状景から日本で培った美術制作を大きく俯瞰し、伝統と現代の関わりについて検証する。また現地での「日本画」を探究し、異なる現場における可能性についても実践する。

海外研修成果発表のご紹介

市川裕司 美術新人賞研修帰国記念

市川裕司展-世界樹-

市川裕司の作品は2つの要素によって大きく特徴づけられている。つまり、素材の一部が透明であること、そして作品が自立することである。いずれも発端にあるのは絵画がおかれる空間に対する問題意識であり、それによって市川の作品は、光を積極的に作品に取り入れながら、空間全体を征服するかのような力強さを備えたものとして作り上げられる。また、市川が長く制作上のテーマとしている英語の「genetic」は、「起源上の」や「遺伝子の」を意味する副詞である。絵画によって生命の発生や起源に至ろうとする試みは、壁面以外の空間にも作品をおくことでその探求における自自由度を手に入れていると言えるだろう。

約1年間のドイツ滞在を経て2会場で開催される個展「世界樹」は、テーマは引き継ぎながら、しかし作品が自立するものではないという点で市川の新たな展開を見せるものになる。ドイツの生活環境の中に組み込まれていたというバーチカルブラインドが、今回の作品形態のソースである。12センチメートル幅に統一された支持体(ポリカーボネート)にはおびただしい数の金属箔が押され、それらは一部、ある果物の形をあらわすようにして切り取られている。市川が作品のモチーフとして選んだのは、あるときは「不死」の象徴として、またあるときはアダムとイブが食して楽園から追放された「知恵の実」として、西欧文明の中で特別な意味が複数こめられているリンゴであり、その総体によって出現するのが、素材ゆえに光を通過させながら同時に反射させる巨大な樹木=「世界樹」にほかならない。見てとれるのは、日本画を専門領域とする市川による、日本絵画の素材として古くから使用されている箔の現代的再解釈である。

さて、「genetic」の名詞は「genesis」だが、名詞としては「起源」というよりもこの意味の方が通っているだろうか。すなわち、「創世記」。はじめて長期国外滞在を経験した市川裕司の、本展は新しいはじまりを示す。

小金沢智(世田谷美術館非常勤学芸員)

日時平成26年3月24日(月) ~ 4月5日(土)
11:30 ~ 19:00
日曜休廊、最終日17:00
入場無料
場所コバヤシ画廊 (東京・銀座)
オープニングパーティ3/24(月) 17:30 ~
日時平成26年3月29日(土)~4月6日(日)
11:00 ~ 20:00
会期中無休、入場無料
ナビゲーター野地耕一郎(泉屋博古館分館学芸課長)
ギャラリートーク3/30(日) 15:00~
4/4(金) 18:00~

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