平成8年度新人賞
※プロフィールは受賞時の情報を掲載しております
東京芸術大学美術学部工芸科漆芸専攻卒業。昭和62年同大学院美術研究科修了。
大西長利氏に師事。
大学卒業後、漆の一般的な使用方法である表面処理や加飾のための技法ではなく、その特性を活かした造形を制作のテーマとしてきた。作品は、石膏で原型を作り、その上に麻布を貼り生漆で塗り固めていくという乾漆技法を用いて、素材の特性と制作過程で得たインスピレーションにより立体造形を行っている。
平成2年のギャルリ・プス(東京・東銀座)における第1回目の個展で注目されて以来、ぎゃらりい彩陶庵(平成3年:山口)、ギャラリーなつか(平成4年、6年:東京・銀座)、ギャルリ・プス(平成5年、7年)などの個展で強い関心を持たれてきた。
グループ展でも、「サントリー美術館大賞展」(平成2年:サントリー美術館)への出品を始め、「塗りの系譜展」(平成5年:東京国立近代美術館工芸館)、「日本の現代作家による漆の造形と屏風繪展」(平成6年:香港)、「素材の領分展」(平成6年:東京国立近代美術館工芸館)、 「Japanese Studio Crafts:Tradition and Avant-Garde」(平成7年:ヴィクトリア&アルバート美術館・ロンドン)などにも招聘され国内外で活躍している。
平成8年4月からニューヨークを中心に、現代美術の表現方法並びに米国の工芸技法を学ぶ。
舟,旗,兎
古伏脇 司
作品制作を旅のように続けてきた私が、昨年4月より1年間ニューヨークに滞在した。人も美術も集中した街で新たな体験を得たが、最も記憶に残るものは違う場所で得た。滞在半年を過ぎたあるとき、友人に誘われミシガン湖近くの田舎町を訪れた。私はそこで人と自然、日常と非日常、それらの境界を感じ、そしてそれらの融合を夢想するひとときをもったのだ。そこで暮らしている友人にとってみれば日常の散歩なのだろう。しかし、鹿狩りの跡である雪中の血痕を追いながら、遠く銃声を聞く状況は、田舎暮らしを知らない私にとっては、非日常の体験であった。
ミシガンの森の空気、美しさときびしさの混在する景色に、私は友人との目に見えぬ距離を意識し、人と自然が接する境界を感じて、目指すべきこれからの造形を見たのだ。そのときの印象を内包する形をつくりだすため、出発点として舟と旗、そして兎を選んだのである。私には自分の意志と、漆という天然素材の意志(特性)との関係を絶えず考え、2つの意志の融合を試みてきた体験がある。その上で、肌で触れじかに感じた「境界」を表現するとき、独自の造形が生まれることを確信している。
日時 | 平成10年1月12日(月) ~ 2月7日(土) |
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場所 | ギャラリーなつか(銀座) |
日時 | 平成10年1月12日(月) ~ 31日(土) |
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場所 | ギャルリ・プス(銀座) |