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平成28年度新人賞

東影 智裕 (ひがしかげ ともひろ)

  • 受賞対象:彫刻
  • 研修地:ポーランド・クラクフ、ワルシャワ
  • 出身地:兵庫県高砂市出身 東京都西東京市在住

受賞者プロフィール

プロフィールは受賞時の情報を掲載しております

兵庫県高砂市出身 東京都西東京市在住
生野学園高等学校 卒業

作品は死ぬこともなければ考える事もない単なる物質でしかない。しかし、その中に記憶を宿し、生と死、心や魂を感じる異質な存在を作りたいと考えている。記憶を元に作り出した動物の頭部や倒木等に少しずつ樹脂の毛並みを覆い造形していく。毛並みは何かに覆い被せなければ形を保つことができない。蓄積された記憶に新たな記憶を寄生させ、その存在を留める。記憶、存在、生と死を主軸として制作を行っている。

これまでの展示は、2011年「龍野アートプロジェクト 2011 刻の記憶 Arts and Memories」龍野アートプロジェクト(兵庫)、「東影 智裕 立体展」あるぴいの銀花ギャラリー(埼玉)。2012年「東影智裕 個展」ギャラリー島田(兵庫)、2013年「龍野アートプロジェクト 2013 刻の記憶 Arts and Memories」龍野アートプロジェクト(兵庫)、「TAGBOAT AWARD」AKI GALLER(台湾・台北)、「杉﨑 良子・東影 智裕 二人展」あるぴいの銀花ギャラリー(埼玉)。2014年「東影智裕展」ギャラリー上り屋敷(東京)、「東影智裕展」ギャラリー島田(兵庫)、「現代郷土作家展~藤原向意・松田一戯・清水浄・東影智裕 生きるものたちへ」姫路市立美術館(兵庫)、「CASA DE TÉ 2014」Galeria de Guadalajara(スペイン・グアダラハラ)。2015年 「第四回興福寺国際美術展」興福寺(長崎)、「今村源+東影智裕: 共生 / 寄生 − Forest」Gallery Nomart(大阪)などで作品を発表している。また、同年ワルシャワ大学において開催された日本学国際学会【日本の文化と宗教における動物】で、「私の作品の中の動物について」の発表および同大学において講義を行っている。

本財団助成による海外研修

2017年3月よりポーランド・クラクフ、ワルシャワを拠点に研修を開始する。戦争、体制など大きな変化を経たポーランドの文化、芸術、宗教感に触れ、自分自身に備わった日本固有の死生観および環境の変化影響を客観的に捉えるため制作と考察を行う。また、中東欧、近隣諸国へも出向き見聞を広める。

これまでの主な受賞歴

2012第7回タグボートアワード グランプリ
2013第8回タグボートアワード 審査員特別賞(山口裕美賞)
2014第3回あさごアートコンペティション スポンサー賞

海外研修成果発表のご紹介

東影 智裕 美術新人賞研修帰国記念

私の制作の根底には重要な要素として「生と死」が存在します。研修地に選んだポーランドの古都クラクフは、複雑な歴史背景を持ちアウシュヴィッツなどにも近く、死をテーマにした作品を多く残す、タデウシュ・カントルを輩出しています。研修以前は東欧諸国に対してどんよりとした薄暗いイメージを抱いていたのですが、ポーランドの地に降り立つと、力強く差し込むような日差しや都市の賑わい、市場の豊かな色彩などにとても驚き、渡航以前のポーランドのイメージが一新されました。

クラクフでの生活を始めて直ぐに中世から残る教会が数多く点在することに気がつきました。時間をかけて教会を巡ってみると、建築様式、装飾や採光がそれぞれ異なっており、その中でも19世紀の芸術家ヴィスピアンスキがデザインした内装、ステンドグラスやその採光、季節により受ける印象の違いなどにとても惹きつけられました。また、ヴィスピアンスキの係わった劇場での観劇や演劇祭、中世の教会や城での音楽祭など日本では経験のできない空間に触れ、日本とは違うポーランドの四季や時間の経過を経験したことによって、今までは意識したことがなかった「陰影」に意識が向くという変化が起こりました。

研修期間中に強く印象に残ったことがあります。一つ目が、日本での生活では感じることのなかった光の陰影です。差し込むような強い光から穏やかな日の光、中世から残る建物の計算された採光、舞台の照明、そのどれもが美しく、今まで気にも止めていなかった自然の陰影にもとても興味を惹かれるようになったことです。

二つ目は、クラクフでの生活ではさまざまな点で自分の考え方がとても日本的であることに気づかされたことです。ポーランドで自分の作品について、「動物の頭部に人の心や魂のようなものを内包する作品を目指して制作している」と説明すると、宗教的観点からとても驚かれることが数多くありました。

細かい技巧的な点や考え方も含めこの感覚を重視し、改めて自分自身が生まれ育った環境から得た感覚を基にした作品を作り出したいと現在も模索しています。

美しい街並みのクラクフから帰国するのがとても名残惜しかったのですが、日本に帰国し、東京から兵庫の山間の地に制作拠点を移し、何気ない里山にかかる雲の流れや時間、季節の流れで変化していく景色、湿度を感じる空気など、クラクフで感じた陰影とは別の美しさに気づきました。その景色から得たものを作品や展示空間に取り入れたいと考え、この成果発表展では、彫刻の大家 平櫛田中が使用していた旧アトリエを展示会場とし、クラクフでの研修で得た陰影、日本的感覚の再認識を基に鑑賞者と作品が独自の空間を共有し、静かな時間の存在が感じられるような世界観を作り出します。

東影 智裕

タイトル見えない時間
Niewidzialny czas
Unseen Time
会期2021年9月23日(木・祝)~10月10日(日)
会場旧平櫛田中邸アトリエ
台東区上野桜木2-20-3
時間13:00〜18:00
休館日9月26日(日) 、29日(水)、10月6日(水)
入場料無料
主催公益財団法人東急財団
協力岡山県井原市、上野桜木旧平櫛田中邸、
NPO法人たいとう歴史都市研究会、一般社団法人谷中のおかって
山喜運送有限会社
後援ポーランド広報文化センター

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