平成30年度新人賞
※プロフィールは受賞時の情報を掲載しております
多摩美術大学大学院 美術研究科絵画専攻 修了
「経験」を主題とした活動を展開。社会に遍在する断片化された情報を独特な仕方で束ねる作風で知られる。写真を主な表現手段としており、近年はウェブ上のアーカイヴから収集した商用・改変使用可能な画像を用いた作品を多く制作している。数年に渡って発表された一連の作品『等高線を登る』では、展覧会ごとに写真や映像、音響、陶、既製品や建築物などの異なる媒体を組み合わせながら、アーカイヴが見ている今日の私たちの経験について描き出した。
個人で発表を行うほか、企画毎に構成員を変えて活動するユニット「構想計画所」としての活動も多く、展覧会や諸領域の研究者を招いたシンポジウムの開催、書籍の出版など多様な活動を展開している。
おもな展覧会に、2007年「Print Biennale in Daegu」Daegu Culture & Arts Hall(韓国)、2011年「ASPECTS 2011」SSRU Art Gallery、CMU Art Museum(タイ)、2013年個展「Climb on the contour line」新風館(京都)、「Impact 8」Duncan of Jordanstone College of Art & Design(スコットランド)、2015年「hyper-materiality on photo」somerset house(イングランド)、G/P gallery(東京)、2017年「showcase #6 引用の物語」eN arts(京都)、個展「The Fictitious」YING GALLERY(中国)などがある。
2019年3月よりアメリカ・ハワイ諸島を拠点に研修を開始。
複雑な奥行を与えられてきたハワイ各地を巡り、土地と歴史、観光、芸術、人々の暮らしの関係を読み解きながら、今日の社会と表現について新たな視座を獲得することを目指す。
2014 | TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD グランプリ受賞 |
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2015 | キヤノン写真新世紀 優秀賞受賞 |
2016 | JAPAN PHOTO AWARD 2016 受賞 |
ハワイと日本には古くから非常に深い縁があり、島の人口の4割以上を日系人が占めていた時代もありました。今でも田舎町を歩けば、私たちが昭和に置いてきた光景をそこここに見つけることができます。徹底して観光地化された今日のハワイの姿は、まるで裏側のない舞台の書割のようにも見えます。しかし当然、その裏側には観光地としての奥行に回収されない現実があり、移民や貧困の問題、経済的発展を背景とした環境や文化の改変など、今日の日本が直面している様々な課題に先立って直面してきた歴史があります。そのような土地に身を置いて、自らの属する社会と表現について相対的に捉えたいと考え、研修の地としてハワイを希望しました。
二次大戦前中後の日系社会の調査から始まった研修では、歴史が客観と主観、あるいは普遍と特殊の境界面として立ち現われるものであると気づかされることが多くありました。そうして関心の焦点は次第に、歴史的な出来事それ自体から出来事が歴史となる過程で失われてしまう存在、いわば歴史の枝葉と呼びうるものへと移っていきました。
複雑な出来事を歴史として記述しようとする営みは、樹木の枝を払って皮を剥ぎ、製材する行為にどこか似ています。ひるがえすと体験していない歴史に応答するということは、製材された歴史に枝葉を与え、再び混沌とした出来事の側へと差し戻そうとする行為であるといえるのかもしれません。
ハワイを「消費」するのではなく「消化」することを目指した一年の研修は、結果として出会った人と場所に素朴に向き合うものとなりました。本展では、帰国後にまとめた2つのシリーズ――ハワイ諸島で撮影した〈Filler〉、そこに暮らす人々の眼差しをモチーフとした〈PortLait〉を中心に発表します。これらは観光地ハワイのきらめきや、その裏側にある暗部をわかりやすく表そうとするものではありません。写し出した人々の眼差しの先に、光でも闇でもない曇りのハワイが、そして戦後にありえたかもしれないもう一つの日本の姿が浮かび上がってくることを願っています。
三田 健志
タイトル | 三田健志個展「忘れていい風景」 個展ウェブサイト https://exhibition.takeshimita.com/ |
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会期 | 2023年12月19日(火)~2024年1月7日(日) |
休館日 | 2023年12月25日および年末年始(12月29日〜1月3日) |
時間 | 10:00~17:00(展示室への入室は16:30まで) |
会場 | 茅ヶ崎市美術館 展示室2・3 茅ヶ崎市東海岸北1-4-45 |
観覧料 | 無料 |
主催 | 公益財団法人東急財団 |
協力 | 公益財団法人茅ヶ崎市文化・スポーツ振興財団 ハワイ大学マノア校 美術・美術史学部、株式会社ハワイ報知社 キヤノン株式会社、株式会社ジェイ・エフ・ジー |
関連イベント | 会期中に<アーティストトーク>を開催いたします。 |
開催日時 | 2023年12月23日(土)14:00〜15:30 |
ゲスト | 世田谷美術館 学芸員 野田尚稔 |
会場 | 茅ヶ崎市美術館展示室2(予定) |
席数 | 30名 |
参加費 | 無料 |
申込 | 不要(当日先着順) *座席の事前予約も承ります(12月21日まで)。 ご予約は右のメールアドレスまでご連絡ください。info@exhibition.takeshimita.com |