平成27年度新人賞
※プロフィールは受賞時の情報を掲載しております
多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻卒業
人や事物との出会いの瞬間に感じた他者の「存在の強度」を、いかに表現し、いかに自分のなかに取り込んでいくか、その模索の過程自体を創作の柱とする。表現媒体としては、和紙と岩絵具を用い、とくに後者の可能性を深く追求する。それによって、他者だけでなく、自身が受け止めた「存在の強度」をも、具体的な形象に転換していく。
個展として、2014年「特別企画・堀江栞個展」(加島美術/東京)、2015年「Art Fair Tokyo 2015」での「堀江栞展」(加島美術/東京国際フォーラム・東京)を開催。グループ展では、「Young Art Taipei 2015」(ATSUKO BAROUH arts drinks talk/SHERATON GRANDE TAIPEI、台湾・台北)に参加。また、『献灯使』(多和田葉子著・講談社2014年)装画•挿画、2015年2月より、隔月誌『こころ』(平凡社)装画と巻頭の小エッセイを担当。
2016年3月からフランス・パリを拠点として、研修を開始する。生活空間に根付いた固い精神の芽を摘み取り、四季を通じて、描きたい対象のさまざまな姿を、「自分の眼で」まっすぐに観察し、制作に活かしていきたい。
2011 | 第11回福知山市佐藤太清賞公募美術展 特選・板橋区長賞 |
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2012 | 第29回FUKUIサムホール美術展 奨励賞 |
2015 | 第6回東山魁夷記念日経日本画大賞展 入選 |
「声よりも近い位置」
堀江 栞
五島記念文化財団(現東急財団)の研修生として海外研修先にパリを選んだのは、自分が生まれた土地であるという親しみを感じていただけでなく、さまざまな人が集い、複数の価値観が共存する場所で、絵を描きたかったからです。
制作にあたって心がけているのは、モチーフを目の前に置き、距離を縮め、観察を重ねて描いていくことです。対象は、いつもすぐそこに、でも見えないところにあります。長い時間にわたって対話を続けることで彼らに近づき、静かに発せられる声を、なんとか聴き取りたい。展覧会の総タイトルを「声よりも近い位置」としたのは、そのような願いを込めてのことです。
かつて私は、動物や石、人形などをモチーフにしていました。傷つけられ、痛みを負い、哀しさや辛さを抱えた存在のありようが、そこに表出されているように感じられたからです。「人」を描くことは、どうしてもできませんでした。しかし、今回のパリ留学をきっかけに、これまでと違う風景が見えてきました。「個」としての「人」からも、声が聴き取れるように感じられたのです。
「痛みを負った哀しさや辛さを抱えている者」たちの声。周囲に、社会に、歴史に踏みつぶされることなく立ち上がる、強い意志を持った小さな声。私がそこに共鳴したのは、これまで自分を取り囲んできた空気に、どこかなじめなかったからかもしれません。単なる共感からだけではなく、彼らの抗いの姿勢を継承するために、「人」を描いてみたいと、はじめて思ったのです。
私には、有機溶剤に対するアレルギーがあります。油絵具やアクリル絵具等の、化学物質が入った画材を使うことができません。天然素材由来の画材だけを使える日本画科に進学して以来、岩絵具 と顔料、膠だけで絵を描いています。自分が唯一扱えるという理由で選んだ画材でしたが、描くほどに、素材の奥深さに魅せられていきました。今では、岩絵具の粒子の一粒一粒が、自分の描きたい存在を形作っているような気がしています。
今回の研修帰国記念展では、この数年描いてきた人物画を中心に、これまで装画、挿画を担当した本の原画、パリの写真も展示いたします。
会期|会場 | 2021年4月3日(土)〜4月17日(土) | Space√K 2021年4月3日(土)〜5月15日(土) | √K Contemporary |
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開場住所 | 新宿区南町6 Tel: 03-6280-8808 Fax: 03-6280- 8809 Email: info@root-k.jp www.root-k.jp |
開場時間 | 11:00~19:00 |
休館日 | 日、月曜日 |
会期 | 2021年5月29日(土)〜6月12日(土) |
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会場 | 加島美術 中央区京橋3-3-2 Tel: 03-3276-0700 Fax: 03-3276-0701 Email: info@kashima-arts.co.jp www.kashima-arts.co.jp |
開場時間 | 10:00~18:00 |
休館日 | 日曜日 |