平成19年度新人賞
※プロフィールは受賞時の情報を掲載しております
平成13年筑波大学大学院芸術研究科彫塑分野修了後、平成15年東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。
同大学非常勤講師を経て本格的に作家活動を開始。
萩焼という伝統工芸の家系を背景に持ちつつも具象彫刻の制作活動を出発点とし、徐々に抽象的な形体へと作品を展開しながら大学在学中より公募展やグループ展で発表を始める。
近作では“彫刻の一素材としての陶”という観点から素材の制約と概念を超越した陶による大型の彫刻作品を制作している。その実験的な試みの中から土の持つ可変性を様々に引き出し、新鮮で堅固な立体作品の創出のうちに存在感のある遺跡のような強さと時間性の表出をテーマとして、古代から現代に受け継がれている日本人固有の美意識の発現を試みている。
平成12年より出品している「新制作協会展」(東京都美術館)において、平成14年と平成17年には新作家賞を受賞するなど新鋭の彫刻家として活躍。
平成18年にはCite Internationale des Arts(国際芸術都市、パリ)に滞在し、3ヶ月間の研修も行っている。
本財団の助成により本年4月から、フランス・パリを拠点に南仏・スペインの先史美術、南仏・イタリアのローマ遺跡、ギリシア遺跡を中心に巡り、それらを取り巻く環境と風土、そして古代から現代に至る時間を体感し、日本文化との比較研究をすることにより、日本における今後、自身の表現技法・テーマなどの芸術活動の指針を確立することを目的として研修する予定。
2002 | 第3回日本ユーモア陶彫展’02 大賞 |
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吉賀伸の近年の仕事は、不確かな形を追い求め、ますます大きくなってきた。それは、表現者としての本質的な部分からきているのだろう。つまり、とらえきれないものをつくりつづけることで、自らの情念を動かす、その何かに迫るという方法である。
今回出品される大作のモチーフは、火と雲である。地を走る炎、夏の空にわき起こる入道雲、あるいは雷雲。はたしてどれも決まった形があるようで、実際にはない。具体的なものを表現してはいるのだけれど、そこにはイメージが存在するだけである。それらの作品は影のようなものであり、彫刻と呼ばれるもの、あるいは美術の本来的な姿でもある。
それぞれの作品は、多くのパーツからなる。いくつものパーツが全体を作り上げる。これは吉賀の術が陶によるからだ。土をこね始めてから焼き上がりまで、いくつもの手順があり、職人的な技術も必要で、それゆえ時間がかかり、何より他人にゆだねる部分がない。彫刻だとそうはいかない。たとえば、伝統的だと考えられるブロンズ像にしても、その鋳造を作家本人がおこなうことはない。
すべてが自らの手によるということは、今日の美術を巡る状況と一線と画すものであるかもしれない。コンピューターなどの機械がその表現の多くを担う美術が、今日の主流のようであるけれども、それは一歩間違えれば、影が影をつくっているようなものになる。新しい古いということではなく、また良いとか悪いとかの問題でもなく、何に根ざすのか、ということを問えば、そういうことだ。
陶であるけれど、吉賀の作品は彫刻的だ。このモニュメンタルな大きさは、彫刻家の思考であり、志向である。この量塊が私たちに問いかける、あるいは迫ってくる、その力こそが、彫刻のもつ魅力である。妖しい輝きだけが、陶という出自を漂わせている。
寺口淳治
広島市現代美術館 副館長
日時 | 2014年8月6日(水)~8月18日(月) |
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開場 | 午前10時~午後8時 |
場所 | 日本橋高島屋6階美術画廊X 東京都中央区日本橋2-4-1 TEL:03-3211-4111(代) |
企画協力 | アートシード |