平成24年度新人賞
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京都市立芸術大学大学院美術研究科版画修了。
版画技法の特徴である、複数性と単独性を同時に有する構造を起点に、樹脂による型取りや版画技法を用いて、日常身の回りに存在する物体の表面を剥ぎ取りつつ再生産する。卓越された技術を駆使し、精巧に彩色を施すことで、あたかも本物と見紛うばかりの別の物体・マルチプルを制作し、相反する方向を同時に遂行することによって引き裂かれた状態のままオブジェとして表現する。
本物そっくりな質感が透明樹脂に置き換わっていく一連の作品が代表作であるが、発電所美術館での個展を契機に、クラッシュした車やテトラポッド、10mを超える大木などから型を取った作品がある一方で、錆びた釘や椿の一葉など繊細で小さな作品まで制作し、「見ること」それ自体の困難さを通じてその豊かさを逆説的に提示する。
主な展覧会は、2006年個展「Desktop,Dress,Gray,」国際芸術センター青森(青森)2008年個展[LOVERS LOVERS]入善町下山芸術の森 発電所美術館(富山)2010年個展「新しい過去」MA2gallery(東京)、2011年「内在の風景」小山市立車屋美術館(栃木)個展「UNTITLED」兵庫県立美術館(兵庫)「Okazaki/Onishi/Object [2]」MA2gallery(東京)2012年個展「THROUGH」ギャラリーノマル(大阪)などがある。
2月からドイツを拠点にヨーロッパ諸国に滞在し、近代・現代の美術工芸や生活文化を視察し、モチーフの隠喩や象徴についての関係を調査する。「もの」と人や文化の関わりを日本文化と相対的に考察することで、現代における「もの」と知覚の関係をより広く有機的に連動させるような表現活動の契機としたい。
2004 | 京都府美術工芸新鋭選抜展 最優秀賞受賞 |
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2007 | あおもり国際版画トリエンナーレ2007 あすなろ賞受賞 |
2008 | 第1回岡山県新進美術家育成「I氏賞」 大賞受賞 |
メディアの爆発的な進歩によって「わたし」というかけがえのない存在さえも情報という流れ行く世界の中に飲み込まれている。その中でいま一度、「モノ・コト」や「わたし」というものが作品の中でどのように存在しうるのか?という問題を抱えてドイツにて研修を行った。
世界でのモノの扱われ方を丹念に洗い出していくこと、制作を見据えて素材との関係を捉え直してみること、欧州での自然風土や文化を感じつつ、東洋的な考え方を探っていくことなどを試みた。そして、こぼれ落ちそうなくらいの多くの宿題を抱え込んで帰国した。
研修中に見つけたアイデアである鏡という素材を糸口に、今までの手法と鏡面を組み合わせることで「Vacuum/真空」と名付けた作品たちが生まれた。透明樹脂からリアリズムに変化する階調の中を漂っていた「間」は、作品の裏側を鏡面に磨きあげることで、「モノの表面」と「表側が映り込む面」に挟まれることになり位置が変った。薄っぺらい関係に僕は何かを期待しながら、また混乱しながらいま制作に向かっている。その混乱を含めての成果を積極的に発表しようと考えている。
大西伸明
日時 | 平成29年4月1日(土) ~ 4月29日(土) |
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場所 | MA2Gallery (東京都渋谷区恵比寿3–3–8) |