松田 奈緒美 （まつだ なおみ）

松田 奈緒美　オペラ新人賞研修帰国記念　ソプラノ

幽玄の美をたたえた歌の世界
松田 奈緒美

平成１６年よりドイツのマンハイムにて留学を開始し、平成１８年より五島　記念文化賞オペラ新人賞の助成を受け、研鑽を積むことができました。
ドイツでの留学期間中は、エリザベート・シュワルツコップやモンセラート・カバリエ等をはじめとする沢山の素晴らしい先生、音楽家とのレッスンや共演する機会にも恵まれ、またオペラ公演やオラトリオ、リートコンサートへの出演など数多くの貴重な経験をさせていただくことができたことに心から感謝しています。

基礎的な発声や声楽技術の習得、特に言葉を大切にするリート表現において、ドイツ、オーストリアのシュワルツコップ先生のご自宅でのレッスンでは、一つ一つの単語の発音、音色と音楽との結びつきや細やかな表現方法について先生自ら歌い、表現を細かく指導していただきました。単語の一つ一つにどれだけの注意を払って大切に表現なさっているのかと、改めて尊敬と感動を覚えたのを今でも忘れることができません。

研修の成果を発表する今回のリサイタルでは、これまでで初めてとなるオールドイツリートのプログラムで、是非皆さまにドイツリートの世界を堪能していただけたらと思っております。ドイツロマン派から１９世紀～２０世紀にかけての世紀転換期に活躍したマーラーやシェーンベルク、ベルクといった作曲家の作品を取り上げ、自身初となる歌曲も数多く取り上げました。

学生時代から音楽や美術、特にクリムトやラリックといった世紀末芸術の時代に心を強く動かされます。先日訪れた美術展で大好きなクリムトの作品を見ることができ、同時代に活躍した音楽家であるシェーンベルクを描いた絵画や、シェーンベルク自身が描いたベルクやマーラーの絵画にふれて、それらの芸術作品の持つ独特の美や美しさと音楽との結びつきや、世界観を改めて深く感じることができました。

以前から心惹かれていたユーゲントシュティールやアールヌーボーといった　概念を反映した装飾性豊かできらびやかでどこか退廃的、一瞬にして幽玄の世界に連れて行ってくれる音色をこのリサイタルで皆さまに感じていただければ嬉しく思います。

今回は尊敬するヴォルフラム・リーガー氏の伴奏で、皆様に聞いていただける機会を得たことに感謝し、奥深く味わいのある詩の世界や、ロマンティックで時に激しく、時に繊細なドイツリートの世界を皆さまに味わっていただければ幸いです。