平成10年度新人賞
※プロフィールは受賞時の情報を掲載しております
昭和60年多摩美術大学絵画科卒業。
平成4年文化庁芸術家インターシップ研修員として上野泰郎氏に師事。
在学中の昭和59年より出品している創画展では、5回(平成元年、2年、6年、7年、9年)にわたり春季展賞を受賞。
昭和62年以後ほぼ毎年個展を開催する一方、「昭和会展」(昭和61年~63年:日動画廊)、「現代日本美術展」(平成元年、4年:東京都美術館ほか)、「現代絵画の一断面-日本画を越えて展」(平成5年:東京都美術館)、「今日の日本画展」(平成7年、9年:山種美術館)、「VOCA展 ’96-新しい平面の作家達」(上野の森美術館)、「東京日本画新鋭選抜展」(平成8年:大三島美術館、奨励賞)、「両洋の眼-現代の絵画展」(平成9年、10年:東京三越ほか)など多くのグループ展にも選ばれ出品している。
鮮やかな色彩と有機的形態がせめぎ合う画面からは、作者自身が強調する宇宙の鼓動が聞こえてくるようであり、揺らぎ流れる動的なイメージは、常に自然に共鳴して描くことにより導かれるという。また、作品の印象が平安時代の十二単衣(ひとえ)にたとえられるなど、日本絵画の伝統素材による平面的表現は極めて東洋的であり、油彩やアクリル絵の具には決して望めない独特な質感・色感に包まれている。
東西美術の相克、その背景にある風土の違いの重要性、作家にとっての体質的風土性などを改めて見つめ直すことを希望し、平成11年3月からニューヨークを中心に研修。
武田 州左さんに大いに期待する
草薙 奈津子(美術評論家)
武田はアメリカに行く時、日本画顔料は一切持参しなかった。アクリル、油彩、水彩、グァッシュと米国で入手できるあらゆる絵具を試み、水に溶ける良質の油絵具を見つけたという。今回の作品はそれを下地に用いている。日本画顔料に絶大な信頼を寄せる彼が、さらなる発色の良さを求めてのことである。
武田州左が学び、得たのは、単に物質的なものばかりではない。古典美術も現代美術も混在するアメリカで、彼の表現するところは力強さを増し、より的確となった。赤や青の鮮烈な色彩は、刺すように、流れるように、疾駆するように、渦巻くように画面を占め、色の、形の、線の大胆で力強い展開が、そのままメッセージの発信となって、作品を幾重にも意味付ける。生命を希求するような明るさ、拡大性、発進性とでもいったものが、画面の奥に沈みこむのではなく、画面上に跳躍する。かつて繊細優美に流れがちであった武田州左は、もっと直截となり、本来意図している宇宙のはてしない生命の追求に一歩近づいたと感じさせる勢いがそこにはある。しかも常に彼の都会人的な垢抜けたセンスが知的かつバランスある画面作りをする。そういう彼の作品からは、伝統的日本画の古典性と、現代美術の先鋭性が感じられるのである。
(寄稿より)
日時 | 平成13年12月12日(水) ~ 25日(火) |
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場所 | SK画廊(杉並) 香染美術画廊(杉並) |