平成10年度新人賞
※プロフィールは受賞時の情報を掲載しております
東京芸術大学大学院美術研究科工芸漆芸専攻修了。
大学、大学院を通じ田口善国氏に加飾技法(蒔絵・螺鈿技法)を、増村紀一郎氏に髹漆法(きゅうしっぽう)・漆塗りの技法を学ぶ。さらに、大学院修了後に故田所芳哉氏、故増村益城氏に師事。
これまでに、「日本伝統工芸展」「日本伝統漆芸展」「伝統工芸新作展」など数々のグループ展に出品し、特に「第12回日本伝統漆芸展」では、東京都教育委員会賞を受賞。
独創的な石膏型を作り、麻布を数枚、糊漆で貼り重ねたあとで離型する乾漆技法で胎(ボディ)を制作してきたが、最近は素地の布の一部を形にして残し、布目部も蒔絵部と対等に模様となるように工夫した作品に取り組むなど、新しい技法への取り組みにも意欲的である。
古文化財の漆工修理修複も手がけてきたため、漆芸品の古典への関心も強く、平成8年には西欧の主要美術館を巡り、渡欧した日本漆芸品の概要を把握してきた。
「16、17世紀に渡来した西欧人が持ち帰った漆芸品の中に取り入れられたものに国際性がある」、また「欧米の古美術と日本の漆芸との共通性を見つけ出すこと」が、今後の作家活動の新展開につながるのと考え、平成11年3月よりロンドンを拠点として欧米を巡り、各国の伝統美術および在外日本漆芸品を研究しながら研修。
1年の海外研修の前と後
奥窪 聖美
16世紀以降、ヨーロッパにもたらされた我国の漆芸品の数々が、今日迄変わらずに大切に愛蔵され続けたのは、単に漆の塗料としての優秀性や加飾技術の珍しさからだけでなく、日本の漆芸品の中にある芸術性が外国人の感性にも受け入れられてきたからだと考えた。研修を終えて「共通の美意識」を結局自分の中に採り込めたかは、内面の事なので見えない。一体それが何なのか決める事も出来ない。私の作品に現れてくる何かに変化があっても、それが、外国人の感性に一致しているとは誰も言うことはできないはずだ。作りたいものを作るのは、研修前と同じなのだが、今回の帰国記念展に向けて制作している作品は、スパイラルやうねりにこだわっているふしがある。制作中は、1年前の同月日に、何処の都市で、何を見て感じ入ったか、毎日思い出している。これが無意識下で、私の掴んだ何かを作品に潜ませることにならないかと、秘かに期待もしたりするのだ。
日時 | 平成13年5月15日(火) ~ 20日(日) |
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場所 | Bunkamura Gallery |