平成5年度新人賞
※プロフィールは受賞時の情報を掲載しております
昭和52年日本大学芸術学部建築デザイン科卒業。
昭和56年渡英、平成元年にロンドン・チェルシー美術大学彫刻科修士課程を修了。
平成元年ロンドン・インスティチュートより名誉学位授与。
訪英前あるいは帰国後も、日本および海外で数多くのグループ展に作品を発表しており、特に平成3年には英国カンブリア市のグライスデール・フォレスト・ミュージアムでの野外プロジェクトに参加し好評を博した。
昭和59年にギャラリースペースB’(福井)で個展を開催して以来、東京、名古屋、広島など各地で毎年行っており、平成2年にはフランス・リモージュで、国際交流基金より助成を得て、ヴァシィヴィエール国立現代美術センターで個展を開催している。
作風は流木、廃材や石材による構成体で¨積み上げる¨という行為に関心を持っているという。
平成6年3月からロンドンで研修。
1990 | 第3回朝倉文夫賞 |
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1991 | 第14回現代日本彫刻展 大賞 |
1992 | 第13回神戸須磨離宮公園現代彫刻展 優秀賞 |
土屋公雄―虚構と記憶―
青野和子(原美術館)
1955年に生まれた土屋公雄が本格的な作家活動を始めたのは、1980年代半ばのことであった。大学で建築を専攻した彼は、81年から約2年間イギリスに渡る。そこで出会った人々の自然観や歴史観に触れ、私たち日本人が幸福な高度成長の名のもとに忘れ去っていた足元の自然に目を止めたのがきっかけで、流木や石、鉄屑などを拾い集め、再構築する仕事を始めたのである。
これまでの土屋の作品タイトルを抜粋し振り返ると、「沈黙」「古代の雨」「顕現」「不在」「月」「所在」「来歴」「落日」と続く。そこには作家自ら来し方行末、すなわち自分自身のアイデンティティーの在処の追求と、自然の循環の中で輪廻する時間という大きな物語の二つが内包されているのが見てとれる。作家は近年、解体家屋の廃材からさらに、すべての生成物を焼き尽くしたあとになお残る、灰へと素材を拡張していった。森も家も私たち人間の肉体までもが、いずれは同じ灰になってゆくのはだれもが知っている真実である。以前は、灰を床に敷いて解体した家屋の影を形作り、そこに例えば〔1974―1993〕といった風に、その家の歴史を刻印する作品を発表していたが、最近は灰そのものを提示する作品へと展開を見せている。
灰は廃材ほどに饒舌ではないが、そこには一切の装飾をそぎおとした、ミニマルな美が存在する。土屋は灰について「物質の終焉ではなく、マテリアルが繰り返し焼かれる事で、物質の存在から非存在へと揺れ動く。さらに焼き尽くし限りなくゼロの地平に還元されてゆくその灰は、そのものが機能していた時間性(歴史と記憶)の意義をより根源的なレベルで問いかけている。」と語っている。
(寄稿より)
日時 | 平成8年2月9日(金) ~ 5月19日(日) |
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場所 | 原美術館(品川・御殿山) |