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平成5年度新人賞

矢延 憲司 (やのべ けんじ)

  • 所属:京都市立芸大非常勤講師
  • 受賞対象:彫刻
  • 研修地:ベルリン
  • 出身地:大阪府

受賞者プロフィール

プロフィールは受賞時の情報を掲載しております

平成3年京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。
大学では、福島敬恭、小清水漸、野村 仁の各氏に師事。
大学院在学中にイギリス・ロイヤル・カレッジ・オブ・アートとの交換留学制度による短期留学を経験。帰国後、デビュー作「タンキングマシーン」を発表。

大学在学中の昭和63年に京都アートスペース虹で初個展を開き、その後、平成元年に不二画廊(大阪)、平成2年に京都アートスペース虹、平成3年にはキリンプラザ大阪で「ヤノベケンジの奇妙な生活展」、平成4年にヒルサイドギャラリー(東京)で「妄想砦のヤノベケンジ」と続けざまに個展を開催している。また、水戸芸術館、兵庫県立近代美術館などのグループ展にも出品。

作品は、人間の身体に装着できるものや、その作品の中に入り込めるといった、参加者一体型の立体的な大きな造形物が多い。

本財団助成による海外研修

平成6年3月からドイツ・ベルリンで研修。

これまでの主な受賞歴

1990第1回キリンコンテンポラリーアワード ’91 大賞

海外研修成果発表のご紹介

矢延 憲司 美術新人賞研修帰国記念 個展

[デリケート]
ヤノベケンジ

1990年代の境目における芸術作品の状態は、悪しき殺戮(りく)映画、突拍子もないシーンのうちの一つに似ている。雨の降る夜に、死体はしっかりと埋葬されていたにもかかわらず目を覚まし、その墓からやっと抜け出して、そこを通りかかる酔っ払いを情け容赦なく殺す。次に、死体は町へと向かう。こうしてぞっとするような殺戮が始まる。

映画を引き合いに出すのは、偶然ではない。映画は醜怪な人間、セックス、暴力、口にするのもはばかれるような欲動について堂々と語ってのけるからである。「キャットウーマン」(ティム・バートンの「バットマン」における)は、神経が高ぶり、その室内を粉々に破壊する。「Hello There(こんにちは)」のネオサインの「O」が砕ける。残った言葉は「Hell There(地獄はそこです)」。また、地獄のヒーローであるペンギン男は、ゴッサム・シティーの子供たちの唖然とするほどの正常さに耐え切れず、彼らを皆殺しにしようと懸命になる。

あるアーティスト達は、1本の木あるいは自分自身の姿をかたどりした1ダースのクローンと肉体関係を持ったり、高さ3メートルの「ビジネスウーマン」を作ったり、ひどく生焼けのステーキがたくさん縫いつけられたドレスで身を飾ったり、また多かれ少なかれまるで生物医学的実験がうまくいかなかったかのように、鼻と口の代わりに肛門とペニスを持つ子供たちを作り出す。

しかしアーティスト達が、この差し迫った殺戮に対して、あるいは絶えず我々を脅かし、マスメディアによれば刻一刻と近づいてるこの黙示録から防護手段を展開させようとするのであっても、驚くには当たらない。

まず、原子放射線が最も高い危険地帯の目録を作成しなければならない。大地のリストを作り、なすべき仕事を資料をもとにシステム化し、防護服さらにはサバイバル服を念入りに作り上げなければならない...。男性、女性、子供、老人、身体障害者といった住民のあらゆる階層、さらには動物のことを考える。運命的瞬間において、全ての者にチャンスが与えられているように。
しかし、幾層かの鉛によって有害な放射線から防護されるこれらのコンビネーションと潜水服、寝たきりの病人のためのこれらの乗り物、これらの装甲列車、厚皮動物の格好をした怪物じみたこれらの車両は、本当に効果があるのだろうか。これらは、われわれを効果的に防護するのだろうか。人々は、これらを当てにできるのだろうか。

矢延 憲司 美術新人賞研修帰国記念 彫刻

日時平成10年3月20日(金) ~ 5月5日(火)
場所キリンアートスペース原宿

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