平成5年度新人賞
※プロフィールは受賞時の情報を掲載しております
昭和58年東京芸術大学卒業。
昭和60年同大学院修士課程を修了し、昭和63年大学院後期博士課程満期退学。
大学では稗田一穂氏に師事。
在学中の昭和58年にギャラリー銀座三番街での「三人展」を手始めに、「蒼粒展」(高島屋)、「埼玉県展」(委嘱出品)、「両洋の眼・現代の絵画展」、「日本画四人展」(大手町画廊)などのほか、ミラノ・アートフェア、アメリカ各地巡回の「NEW VOICE展」など海外の展覧会にも作品を発表している。
創画会に所属し、昭和59年以後は毎年「創画展」に出品を重ね、これまでに創画会賞を2回(昭和60年、63年)、春季展賞を4回(昭和62年、平成元年、2年、4年)受賞。個展も在学中の昭和62年に銀座スルガ台画廊で「レスポワール展」と題する初個展を開き、その後毎年各所で開催している。
平成6年3月からニューヨークで研修。
1987 | 第9回山種美術館日本画大賞展 優秀賞 |
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1990 | 第1回菅 楯彦大賞展 佳作賞 |
“龍”について―岡村桂三郎君のために
天野 一夫(O美術館 学芸員)
岡村はアメリカのコネチカットの湖畔で、自然を前にして神を祭る場がないことに気付き、たじろいだという。しかしそれは宗教的な風土の異なりだけではないだろう。現代におけるわれわれの足下ではかつてのような共同体の宗教的な場は変質し、特定の磁場を無くして平べったい空間が拡がっている。そのような中でこの”龍”は、入るべき地中の龍穴をまさぐるように横ざまに身をくねらしているのではないか。プライベートなアロエ等植物の観察を契機にして発揚した”龍”としての絵画。今日まで稀なことだが、作家はその個人的イメージをあえて古代以来のイマジネーションに敢えて乗じさせることによって、その決定的な形象のイコン化の中で、顔料から支持体まで出来うる限りフィジカルに自造することで、物体と一体化しもろともに個人的なイメージを超えた物象になりおおそうとするのだ。この荒々しい水の生き物、龍は、艶めかしいまでの実体を秘めながら装飾性の中に生き、物と合一を目指しつつも不断に突き返され、作家は果たされずに表層でまた生きる。黒と茶を主体にして色彩を抑えながら、そこでは表面にひたすら線描を繰り返し紋様を刻することで、作家はわれわれと不可視の世界との境界面に存在するものを探っている。”龍”とは現代の時空における、そのような作家と世界との闘争劇の痕跡なのだろう。
(寄稿より)
日時 | 平成10年4月10日(金) ~ 5月15日(金) |
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場所 | 佐賀町エキジビット・スペース |