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学術研究成果リスト

学術研究詳細

研究課題

溶存N2/Ar測定による多摩川における脱窒の推定

学術研究 No.320
代表研究者 木庭 啓介
所属(当時) 東京農工大学農学研究院 准教授(京都大学生態学研究センター)
研究内容要約

多摩川中流域と下流域の8ステーションにおいてアンモニウムイオン,硝酸イオン,亜硝酸イオン,一酸化二窒素の濃度およびその同位体比,および溶存窒素ガス濃度の測定を行った。同時に硝化および脱窒に関する機能遺伝子濃度,そして脱窒を駆動するのに必要な溶存有機体炭素の形態についての測定を行った。どのステーションにおいても硝化及び脱窒の機能遺伝子はかなりの濃度で認められ,また溶存有機物も分解しやすい画分が認められたことからどのステーションにおいても硝化,脱窒両方が駆動する環境であることが示唆された。しかし,溶存窒素ガス濃度はどのステーションでも大気平衡濃度とほぼ等しく,脱窒(一酸化二窒素還元)は認められなかった。一方で,脱窒の中間生成物,そして硝化の副産物として生成される一酸化二窒素についてその生成過程を安定同位体比により解析したところ,硝化によって主に生成されていることが示唆された。この結果は今後の一酸化二窒素放出削減に向けて重要な情報となると考えられる。

本研究の結果は多摩川での脱窒はそれほど顕著ではないということをしめすものとなった。このことは,現在の多摩川の窒素濃度を制御しているものが還元的環境での脱窒ではなく,むしろ好気的環境での生物(付着藻類など)による窒素同化によるものと言うことを示唆するものである。今後多摩川の水質,特に窒素化合物濃度が増大する場合に,その対策として河川の自然窒素浄化能力である脱窒ではなく,付着藻類の繁殖を効果的に促進するような施行を考えるといった,将来の多摩川水質保全に向けての重要な情報を本研究は提供できると期待される。また,温室効果ガスでありオゾン層破壊ガスでもあるため,その削減が求められている一酸化二窒素については,硝化で生成していることが明らかとなったため,その削減のためには完全脱窒を促進するのではなく,有機物負荷を押さえ,無機化・硝化そのものを押さえる必要があるという,こちらも将来の対策に向けて有用な情報を提供することができると期待される。


共同研究者

Nguyen Cong Thuan 東京農工大学大学院博士課程学生

眞壁明子 東京農工大学産学官連携研究員

矢野翠 東京農工大学産学官連携研究員


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