環境

学術研究成果リスト

学術研究詳細

研究課題

安定同位体比及び土壌微量成分分析を用いた河床低下に伴う土丹露出・流出による河川生態系への影響についての研究

学術研究 No.302
代表研究者 浅枝 隆
所属(当時) 埼玉大学大学院理工学研究科 環境科学領域 教授
研究内容要約

昭島地区の河床や洪水敷で土丹層が露出している景観は多摩川八景の一つになっている。土丹が露出した河床は洪水時に表層が剥離し塊または細粒状態で流下する。一方、多摩川の高水敷においては細粒土成分の割合が極めて高く、藪化・樹林化が急速に進行している。植物の生育条件が細粒度によって大きく助長されることを考えると、土丹層起源の細粒土が、藪化・樹林化を促進するトリガーになっている可能性がある。そこで、本研究では河川敷の土丹土壌と砂質土壌の特性を比較することで土壌トレーサーと成りうる元素の検討を行なった。含水率、粒度組成(D50)、全窒素(TN)、全炭素(TC)、全リン(TP)、硫黄(S)、窒素および炭素の安定同位体比(δ15N・δ13C)、溶存態窒素(NO2-・NO3-・NH4+)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)の計18項目の分析の結果、TN、TC、δ15N、Mg、Znの5項目は土丹土壌と砂質土壌で濃度に有意差が認められた(Student's t-test, P<0.05)。これらをトレーサーに用いることで土丹土壌の影響を評価できる可能性が示唆された。


今回の測定で、トレーサーとして利用できる要素が明らかになった。その中で、安定同位体比は当初考えていた、硫黄等のものを用いなくても十分トレーサーになることが可能である。本研究期間中には、下流高水敷の細粒土砂の起源として極めて高い可能性を示すことはできたものの、その定量的な把握には至らなかった。今後、より広い地域を定量的に調査することで寄与率の算出が可能になると思われる。


一方で、近年、多摩川の河川敷においては、従来のオギ等に代わり、クズやニセアカシア等の窒素固定細菌と共生する種の割合が高くなってきている。上流地域の土丹起源の土壌と共に、これらも樹林化を進展させる大きな要素と考えられる。今回の研究の中でも一部測定を行ってはいるが、こうした植物種が、土壌の富栄養化に寄与する影響およびその機構を明らかにする必要がある。

共同研究者

内田 哲夫 埼玉大学大学院博士後期

研究全文