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学術研究詳細

研究課題

多摩川流域の森林丘陵地におけるPM2.5の沈着量の評価

学術研究 No.323
代表研究者 松田 和秀
所属(当時) 東京農工大学農学部 准教授
研究内容要約

多摩川流域の森林丘陵地が、東京周辺域のPM2.5の浄化に果たす役割を理解することを目的として、フィールドミュージアム多摩丘陵の大気観測鉄塔を利用した乾性沈着観測を実施した。年間を通したPM2.5成分の長期観測から、観測地周辺のPM2.5は環境基準を達成できておらず、無機イオン成分の90%は、SO42-、NO3-、NH4+の3成分から構成されていた。PM2.5成分の鉛直方向の移動を直接測定する緩和渦集積法を利用して、計4回(2014年9/2~7、11/27~12/5、2015年4/9~17、7/21~8/1)の集中観測を実施した結果、PM2.5中の硫酸塩と硝酸塩は鉛直下向きに移動、すなわち沈着していることが分かった。硫酸塩の沈着速度は、他地域の森林における観測値と同レベルの値を示したが、硝酸塩の沈着速度は、硫酸塩よりも有意に大きく、硝酸アンモニウム粒子の揮発に伴う沈着の促進によるものである可能性が示唆された。これらの結果より、当該森林丘陵地は、PM2.5の浄化に寄与しており、特に冬季硝酸アンモニウム粒子を効率よく除去していることが明らかになった。

大気汚染物質の乾性沈着直接測定は容易ではなく、先端的な手法の一つである緩和渦集積法によって、PM2.5成分の沈着を直接測定した事例は、世界的に見ても少ない。当該手法を用いた今回の観測により、多摩川流域の森林丘陵地へPM2.5の主要成分である硫酸塩および硝酸塩が沈着していることが明らかとなり、その沈着速度は、他の地域の森林と同等あるいはそれ以上である可能性が示唆された。これは、PM2.5の環境基準達成率が極めて低い東京周辺域における今後のPM2.5の影響評価において重要な知見である。さらに、硝酸アンモニウム粒子の揮発に伴う沈着促進効果に関する知見は、他地域の森林でも起っている可能性があり、学術的にも貴重な観測データを得ることができたと考えられる。


共同研究者
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