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学術研究詳細

研究課題

多摩川流域に植栽されたサクラ類の新たな腐朽病害対策の確立に関する研究

学術研究 No.297
代表研究者 福田 健二
所属(当時) 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授
研究内容要約

2003年から腐朽病害調査が行われている名勝小金井桜等の調査地において,2009年に調査を行い,腐朽菌子実体の分布の変遷を明らかにした.腐朽病害木の伐採が行われているにもかかわらず発生率は低下しておらず,2009年度に新たに子実体が発生した樹木個体や,過去に子実体が発生したが2009年にはみられなかった個体が一定の割合を占めた.したがって,サクラの腐朽被害を把握するには3年以上の継続調査が必要である.さらに,主要な根株腐朽菌であったベッコウタケについてDNAマイクロサテライトマーカーを作成し,小金井公園,名勝小金井桜,八王子市立富士森公園ほかの調査地において,子実体間の遺伝的構造を解析した.その結果,いずれの調査地でも担子胞子の任意交配がみられ,隣接する樹木に発生した子実体にも自己相関が見られなかった.このことから,ベッコウタケの被害拡大は,土壌や根を通じた菌糸の進展ではなく,別の担子胞子由来の菌株の感染によることが明らかにされ,防除には子実体のすみやかな除去と,植栽時の苗木の根や土壌への潜在感染の考慮が必要と考えられた.


サクラの主要な腐朽菌の種類が明らかにされ,それぞれの主な被害箇所や地域ごとの被害発生パターンが示されたこと,腐朽菌の被害木の把握には3年以上の継続調査画必要であることが明らかにされたことから,今後,多摩川流域のさまざまな桜並木や公園において,腐朽被害の実態把握を進めるための基礎ができたといえる.また,特に被害が著しい根株腐朽菌のベッコウタケについては,隣接木であっても,菌糸の進展や根の癒合を通じた感染ではなく,別の担子胞子由来の菌株の感染による被害が生じていることが明らかになったことから,菌糸による隣接木への被害拡大よりも,苗木植栽時や若木時に別の胞子由来の菌株が感染し,長期間かけて被害として顕在化した可能性が考えられた.したがって,子実体の除去などの胞子飛散防止措置や,苗木植栽時に苗木の根や土壌中にベッコウタケ菌が潜在感染していないかを精査するといった対策が,サクラの腐朽病害防除のための新たな取り組みとして考えられる.

共同研究者

松下 範久(東京大学 准教授)


渡辺 直明(東京農工大学 助教)


清水 淳子(東京大学 技術職員)


森田 敏充(東京大学 自然環境学専攻修士課程)

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