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学術研究成果リスト

学術研究詳細

研究課題

多摩川全域の河川堆積物と河川水の有害重金属元素マッピング

学術研究 No.300
代表研究者 加藤 泰浩
所属(当時) 東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻 准教授
研究内容要約

学術研究No. 283に引き続いて、2010年7月より多摩川・羽村堰より下流の野外調査を行った。秋川、北秋川、養沢川、浅川、多摩川本流の76地点から河川堆積物および河川水試料(137試料)を採取し、前年度と合わせて169地点の試料(313試料)を確保した。これらの河川堆積物、河川水試料についてICP-MSおよびXRFにより化学分析を行った。その結果、河口域を除く多摩川全域の河川堆積物の有害重金属元素(Cu、Zn、As、Cd、Pb)含有量は、CuとZnは局所的に土壌含有量基準値を超える試料が存在するものの、それ以外の元素の含有量は基準値を大きく下回る。しかし、河川堆積物の有害重金属元素含有量は、UCCより有意に高いものがほとんどである。本地域には未発見の熱水性鉱床が存在する可能性が高く、重金属元素の異常値はその地質学的バックグラウンドによるものであると考えられる。また、河川水のZn、Asも水質基準値を下回り、多摩川全域において有害重金属元素による汚染はほとんどないと考えられる。一方、河口域においては有害重金属元素の顕著な濃度上昇が見られた。これは人間活動に由来する環境負荷の増大の他、堆積物の粒径が小さくなることによる重金属元素の凝集によるものである可能性が考えられる。学術研究No. 283と併せて、多摩川全域(丹波川、小菅川、奥多摩湖、日原川、大丹波川、秋川、北秋川、養沢川、浅川、多摩川本流)の169地点から河川堆積物、河川水試料の採取・分析を完了した。これにより、河川堆積物の54元素および河川水の11元素の分布が明らかとなり、他に類を見ない極めて高精度の地球化学マッピングが完成した。高精度のデータの集積は、環境浄化のための具体的な提言を可能にするであろう。また、本研究のデータと河川流量のデータを掛け合わせることにより、多摩川水系から海洋にもたらされる54元素のフラックスを見積もることができると考えられる。さらに、人間活動に由来する有害重金属元素が海洋中に流入するフラックスを見積もることで、海洋環境への影響も評価することができると期待される。

共同研究者

藤永公一郎(東京大学工学系研究科)


中村謙太郎(海洋研究開発機構)


板橋弥生(東京大学工学系研究科)

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