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学術研究詳細

研究課題

多摩川上流域の山地斜面における深層崩壊に関する地形・地質学的研究

学術研究 No.310
代表研究者 苅谷 愛彦
所属(当時) 専修大学文学部 教授
研究内容要約 堆積岩山地では深層崩壊(巨大崩壊)や,その準備過程として岩盤の重力変形(Deep-Seated Gravitational Slope Deformation:DSGSD)がしばしば生じる.多摩川上流地域も広く堆積岩が分布するが,深層崩壊やDSGSDに関する研究はほとんどなかった.本研究は空中写真判読(地形分類),GIS解析,野外地質調査,火山灰・14C編年等を統合した地形学・地質学的手法により,多摩川上流地域の深層崩壊とDSGSDの実態を解明したものである.

DSGSDは北東向き斜面でよく発現し,座屈変形やトップリングを伴う.特に,奥多摩町倉戸山,小菅村三頭山,丹波山村保之瀬天平に好例が多い.深層崩壊は日原川右支樽沢や小菅川右支玉川などに限定される.これら諸現象の形成期は不明な点も多いが,保之瀬天平では9.5万年以前,倉戸山では1万年以前にDSGSD性の線状凹地が形成されていた.玉川の深層崩壊は鎌倉時代以前に生じ,河道堰き止めを引き起こした.

多摩川上流地域では,深層崩壊の発生地点は限定的であるが,DSGSDやそれに関連した地形(線状凹地)は各地で生じている.この事実は,この地域の地形発達に対してDSGSDが大きな影響を及ぼしてきた可能性を示唆する.本研究により明らかになった諸点をふまえ,多摩川上流山地の斜面発達史を再検討することが必要である.また深層崩壊の潜在発生域となりうるDSGSDの分布や実態が明らかになったことで,砂防や治山の面でも種々の検討課題が生じてくると予想される.一方,深層崩壊による河道堰き止めの堆積物や,線状凹地の埋積物質はテフラや植物化石を良好に保存することが確かめられた.一般に,山地は侵食作用が卓越するため,古環境研究に関する資料の獲得は難しいことが多いが,これらの堆積場を活用した当地域の第四紀研究が進展することも考えられる.
共同研究者 佐藤 剛

目代邦康

清水長正
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