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学術研究成果リスト

学術研究詳細

研究課題

多摩川上流における風穴の現状およびその自然条件と温度観測

学術研究 No.318
代表研究者 清水 長正
所属(当時) 駒澤大学文学部地理学科 非常勤講師
研究内容要約

風穴とは、山の斜面の表層部が特に低温で、夏に冷風を吐出する場所またはそうした現象である。明治期の蚕種貯蔵風穴(蚕の卵の孵化を抑制し養蚕の時期を延長させるための天然冷蔵倉庫)はこの現象を利用したもので、多摩川流域内で4箇所(檜原風穴・熊澤風穴・釜ノ澤風穴・奥秋の風穴)、多摩川流域の分水界周辺で1箇所(風穴の澤)が確認されている。本調査では、それらの風穴の遺構とその周辺の地形・表層地質・植生などを調べた。これらの風穴で、2014年から2016までの約2年間、風穴の地温と気温を観測した。また、檜原風穴と釜ノ澤風穴では、それぞれ斜面の上部に温風穴(冬に温風を吐出する)を見出し、そこの地温も観測した。それぞれの風穴の岩石の試料により、風穴の熱源となる岩石の蓄熱についても冷凍実験を行った。2014年は多摩上流域が大雪に見舞われた年で、檜原風穴での消雪状況をインターバル撮影によりとらえた。さらに、冬季における温風穴と冷風穴の吐出と吸込みの関係を自記風速計で観測した。

蚕種貯蔵風穴は、明治期の養蚕業に関わる産業遺産としての価値が認められてきており、群馬県下仁田町の荒船風穴は国指定史跡のほか世界文化遺産登録がなされた。多摩川流域にも本報告で明らかにした蚕種貯蔵風穴が分布するが、これまでほとんど知られていなかった。本報告で、風穴の現状やその自然環境などが明らかとなった。山梨県丹波山村に残存する蚕種貯蔵風穴は、遺構の規模がやや小さく保存度も良好でない。いっぽう、東京都檜原村に残る檜原風穴は、3基の遺構が残存しており、そのうち1基はやや規模が大きい。これを、東京都唯一の蚕種貯蔵風穴跡として文化財指定へ向けるよう、地元の檜原村教育委員会へ働きかけている。このため、檜原村関係者ならびに現在推進されている秋川流域ジオパーク構想関係者を対象とした風穴視察会を、2016年6月24日に開催した。この視察会により、檜原風穴をジオサイトの指定へ向け、檜原村・あきる野市のジオパーク関係方へ要請している。


共同研究者

指村奈穂子 琉球大学西表研究施設森林生態学


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