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学術研究詳細

研究課題

多摩川における亜酸化窒素生成細菌の生態と窒素動態における役割の解明

学術研究 No.296
代表研究者 多羅尾 光徳
所属(当時) 東京農工大学農学部 准教授
研究内容要約

多摩川上流・中流・下流の河川水および石面付着微生物膜における亜酸化窒素生成脱窒微生物の分布を調べ,河川からの亜酸化窒素(N2O)放出との関連を考察した。有機態炭素70 mg L-1および硝酸態窒素7の低濃度の培地を用いると,硝酸塩肉エキス培地(有機態炭素,3,900 mg L-1;硝酸態窒素70)のような高濃度の培地を用いたときよりも最大で1,000倍も多くの全脱窒微生物を検出した。これら全脱窒微生物の多くは硝酸をN2Oにまでしか還元しない亜酸化窒素生成脱窒微生物と推察された。河川水から分離した亜酸化窒素生成脱窒細菌MS-1株は硝酸の大部分を亜硝酸に還元し,さらにその約半分をN2Oにまで還元した。上流および下流の河川水と微生物膜が付着する石を密閉容器にて培養したところ,上流の試料では生じた気体状窒素のほとんどがN2あったのに対して,下流の試料ではほとんどがN2Oであった。亜酸化窒素生成脱窒微生物は多摩川からのN2O放出に寄与している可能性が示された。


多摩川には亜酸化窒素生成脱窒微生物が全脱窒微生物の大きな割合を構成していることが示され,この微生物が河川におけるN2O生成に関与している可能性も示された。今後は,亜酸化窒素生成脱窒微生物・亜酸化窒素還元脱窒微生物・硝化細菌の河川における動態を解明し,それらが河川からのN2O放出にどのように関与しているかを定量的に明らかにしていくことが求められる。本研究ではまた,多摩川から亜酸化窒素生成脱窒細菌MS-1株を分離することに成功した。MS-1株のような性質を有する亜酸化窒素生成脱窒細菌は,他の水界環境にも存在するかもしれない。このような細菌の河川におけるN2O生成や窒素循環における関与を定性的・定量的に解明することにも興味が持たれる。

共同研究者
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